「ピンチはチャンス」なんて思えなかった日。台風被災から学んだ、手帳で乗り越える力


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きれいごとに聞こえる言葉の裏にあるもの


「ピンチはチャンス」

誰もが一度は耳にしたことのある言葉だと思います。自己啓発本にも、成功者のインタビューにも、よく登場するフレーズです。

言葉としては理解できます。でも、実際にピンチの真っただ中にいるとき、この言葉を素直に受け取れる人が、果たしてどれだけいるでしょうか。

私には、到底無理でした。

2019年の台風で自宅が床上浸水したとき、「これはチャンスだ」なんて、1ミリも思えませんでした。目の前に広がる惨状に、ただ立ち尽くすだけでした。

今日は、そのときの経験と、そこから気づいた「ピンチをチャンスに変える、たった1つのこと」についてお伝えしたいと思います。

2019年の台風。自宅が床上浸水した日のこと


あの日のことは、今でもはっきりと覚えています。

台風が接近するとの情報は事前にありましたが、まさか自宅がここまでの被害を受けるとは思っていませんでした。水が引いた後に見た室内の様子は、言葉では言い表せないほどでした。

家具は水で濡れ、畳はすぐにカビてしまい、フローリングも剥がれてしまいました。長年使っていたものが、次々と使えなくなっていました。

茫然としながら立っていると、頭の中にはさまざまな不安が押し寄せてきました。

「この先、どうなるんだろう」
「修繕費はどれくらいかかるのか」
「こんな状態がいつまで続くのか」
「もとの生活に戻れるのか」

遠い未来への漠然とした不安が、次から次へと湧いてきました。こういう状況に置かれると、人はどうしても「最悪の未来」を想像してしまうものだと、身をもって知りました。

そして、不安になればなるほど、思考は止まり、体は動かなくなっていくのです。

「今できることに集中する」という気づき


転機が訪れたのは、家族と一緒に片付けを始めてからのことです。
                                                               
途方もない量の作業を前に、最初は「どこから手をつければいいのか」すら、分かりませんでした。全体を見渡せば見渡すほど、絶望感が増していく。そんな状態でした。

でも、家族と話し合いながら少しずつ作業を進めていくうちに、1つのことに気がつきました。

「今できることに集中する」こと。それだけが、前に進む唯一の方法なのです。

遠い未来を心配しても、今の状況は何も変わりません。でも、目の前の1つのことに取り組めば、現実は少しずつ動き出す。頭で考えるより先に、体がそれを教えてくれた感覚でした。

不安な時ほど、手帳を開く


そのとき、私が実際にやったことがあります。

手帳を開いて、今日やるべきことを書き出すこと。

「片付けを30分だけやる」
「保険会社に連絡する」
「必要な書類を1つ揃える」
「明日の業者の予定を確認する」

どれも、ごく小さなことです。「こんなことを書いても意味があるのか」と思うかもしれません。でも、これが本当に大きな力を発揮しました。

不安や焦りで頭がいっぱいのとき、人は「全体」を一度に解決しようとしてしまいます。しかし当然、それは無理です。その無力感がさらに焦りを生み、悪循環に陥っていきます。

手帳に「今日やること」を書き出す行為は、その悪循環を断ち切る効果があります。

膨大に見えた問題が、具体的な小さなタスクに分解され、「今日はこれだけやればいい」という明確な指針ができる。頭の中のモヤが晴れて、ようやく体が動き出せる状態になるのです。

1週間の振り返りが、「もう少しがんばろう」という気力をくれた


私は普段から、毎週、1週間の振り返りを手帳で行う習慣があります。被災した当時も、その習慣を続けていました。そして、困難な時期ほど、この振り返りが大きな力を発揮することに気づきました。

辛い状況の中にいると、「何もできていない」「全然進んでいない」という感覚に陥りがちです。しかし実際に手帳を見返してみると、驚くことがありました。

「結構、色々やっていたんだ」

書類の手配、業者との連絡、片付け、家族のケア。その週にやったことを書き出してみると、着実に前進していた事実が浮かび上がってきたのです。

「今週はここまで進んだ」
「これができた」
「先週よりも、ここが片付いた」

手帳という客観的な記録が、自分では気づけなかった「前進」を可視化してくれました。

そしてそれを確認したとき、初めて「もうちょっと、がんばってみようかな」という気持ちが湧いてきたのです。

感情や主観だけに頼っていたら、おそらくずっと「何もできていない」という感覚のままだったと思います。

記録があったからこそ、現実を正確に見ることができました。それが、次の一歩を踏み出す勇気を与えてくれました。

ピンチをチャンスに変えるのに、才能はいらない


「ピンチはチャンス」という言葉は、後になって初めて意味を持つものかもしれません。渦中にいるときに、チャンスなんて思えなくていいのだと思います。

でも、ピンチを乗り越えた先に気づくことがあります。

あの経験があったから、こんな強さが身についた。あの困難があったから、今の自分がいる。被災当時は「なぜこんな目に」と思っていたことも、今では確かにそう感じています。

そしてその「乗り越える力」は、特別な才能でも、強靭な精神力でもありませんでした。

目の前のことに集中し、1つずつ確実に進める。それだけです。

その一歩一歩を支えてくれたのが、手帳でした。

困難な時こそ、手帳を開いてみてください


もし今、困難な状況に直面しているなら、ぜひ手帳を開いてみてください。

まず、今日できることを、どんなに小さくても構わないので書き出してみてください。そして、その日やったことを記録してみてください。週の終わりに、その記録を見返してみてください。

「こんなこと、意味があるのかな」と思うかもしれません。

でも、やってみると分かります。手帳に書かれた小さな前進の積み重ねが、「もう少しだけ、続けてみよう」という気持ちになるはずです。

 
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